協議離婚とは、裁判所を挟まずに、夫婦で離婚の条件などの話し合いをした結果、離婚に合意した場合に、離婚届を作成し市町村役場に提出する離婚方法のことをいいます。
他の離婚方法としては、調停離婚や裁判離婚などがありますが、日本の離婚方法の中で最も多いのがこの協議離婚の方法です。
協議離婚は、夫婦で話し合いをすることで解決を図る方法ですので、他の離婚方法に比べて費用もかからず、互いに離婚に合意をすればすぐに離婚をすることができます。もっとも、その手軽さ故に、本来であればもっと金銭的な請求ができたにもかかわらず、離婚したいという気持ちが先走ってしまい、不利な条件で協議離婚をしてしまう方も少なくありません。
この記事では、それを避けるために、協議離婚を有利に進めるポイントを解説します。

1 協議離婚の流れ
「離婚」と一言で言っても、夫婦によっては離婚をする上で決めなければならない法的な要素(例えば、親権や養育費、財産分与)が多数ありますし、離婚後の生活のイメージを持つ必要もあります。ここでは、協議離婚の流れについて解説します。
⑴ 離婚を切り出す上で準備をすること
離婚を切り出す上で、次のような準備をする必要があります。
① 離婚をしたい理由を明確にする
まずは、そもそも何故離婚をしたいのか、その理由を明確にする必要があります。夫婦生活を続けいく中で、多くの不満やストレスを抱えることもありますが、その全てを取り上げると話し合いがこじれてしまう可能性があります。
自分にとって何が1番許せなかったか、不満だったのか、その決定的な理由をまず確認しましょう。上手く話せるか不安な方は、メモにまとめておくのもいいでしょう。
② 水掛け論を防ぐために携帯電話などで会話を録音しておく
離婚を切り出した際の相手の反応や、そこで相手が話したことを、あとで「そのような発言はしていない」と言われてしまう可能性もあります。そのような言った言わないの水掛け論を防ぐために、携帯などで事前に録音をする必要があります。録音する際には、相手に事前に同意を求める必要はないので、相手に黙って録音をします。
③ 相手が感情的になった時に避難できる場所(実家等)を確保しておく
相手の性格によっては、離婚を切り出すと感情的になり、時には暴力を振るう人もいます。そのような場合には、離婚の話し合いをすぐに打ち切り、避難する必要も生じてきます。
そのような可能性も考えられる方は、離婚を切り出す前に、事前に避難ができる場所を確保することをお勧めします。
④ 子どもがいない時間をみて話し会う
幼い子供がいる場合には、落ち着いて離婚の話し合いができなくなる可能性もあります。そのようなことを防ぐために、子どもが就寝した頃に話し合いを始めることや、場合によっては、親族に一時的に子どもを預けておくことも検討する必要があります。
⑤ 不貞などの証拠がある場合にはしっかり保存しておく
離婚の理由が相手の不貞にある場合、その証拠をしっかり保存しておく必要があります。
不貞を理由とする慰謝料請求の方法などについては、以下の記事で解説していますので、ご参照ください。https://ika-ricon.life/legal_howm/
⑵ 離婚条件を話し合う
離婚を切り出して、離婚自体に合意ができるようであれば、今度は離婚の条件を決める必要があります。主な離婚条件は次のとおりです。
① 親権
未成年の子どもがいる場合、離婚をする上で必ず子どもの親権者を決める必要があります。
② 養育費
仮に、親権を母親が取得した場合、一般的に、父親は母親に毎月養育費を支払う義務が生じます。この養育費の金額について、夫婦の互いの年収や子ども人数、年齢によって決まります。参考までに裁判所が養育費を定める際の資料を貼っておきます。
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html
③ 財産分与
財産分与は、夫婦生活で築き上げた財産を離婚時に分けることをいいます。通常は、夫婦で財産を折半することが多いですが、離婚の理由などによっては、一方に多く財産を分けることもあり得ます。
また、不動産がある場合には、その不動産に関連するローンも財産分与の対象となってしまうためご注意ください。
④ 慰謝料
離婚の理由が相手方の不貞や暴力などにある場合、慰謝料を請求することができます。慰謝料の方法や金額などについては、以下の記事で詳しく説明をしていますのでご参照ください。

⑤ 年金分割
年金分割は、いわゆる2階部分にあたる厚生年金および共済年金について、一定の条件に該当した場合に、婚姻期間等の対象期間中に収めた保険料の納付実績を”夫婦が共同で収めたもの”として分割する制度です。
これらの離婚条件を、離婚を切り出す前にある程度のイメージを持っていたほうがいいです。ただ、これらの離婚条件は、法律的な要素ですので、できれば1度弁護士に相談をし、イメージを固めていくことをお勧めします。
⑶ 離婚届・離婚協議書の作成
離婚の条件が整った場合には、離婚届を作成し、提出する必要があります。また、離婚届には、親権者などの必要最低限度の内容しか盛り込まれていないため、財産分与や養育費について夫婦間で合意ができた場合には、離婚届とは別の離婚協議書を作成する必要があります。
ここでは、離婚届は合意書について詳しく解説します。
① 離婚届の作成、提出
離婚届はお近くの市役所などで用紙をもらうことができます。また、インターネット上でダウンロードをすることも可能です。
また、離婚届は、夫婦の本籍地のある役所が、夫または妻の住所地の役所に提出します。本籍地のある役所以外に提出する場合には、戸籍謄本を離婚届と合わせて提出する必要があります。
② 離婚協議書の作成
離婚届には親権者を記載する項目しかないため、夫婦間で養育費や財産分与については話し合いがなされた場合には、あとで争いになることを避けるため離婚届とは別に離婚協議書を作成する必要があります。
これについては、当事者で作成することも可能ですが、誤りがある離婚協議書に一度署名をしてしまうと後で取り返しがつかないことにもなるため、離婚協議書を作成する場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

2 協議離婚を有利に進めるポイントと注意点
それでは、離婚協議を有利に進める上でどのようなことに注意するべきかを解説します。
⑴ 離婚条件について即断をしない
離婚を早期にしたいがために、離婚条件を相手の提案どおりに承諾してしまう方がいます。早期に離婚をすることが何より大切という考えであれば、このような即断も意義があることかとは思います。
ただ、離婚をした後、これまでの生活は一変し、経済的に不安定な状況に陥る可能性も考えられます。このような場合、本来であれば養育費や財産分与、慰謝料などについてもっと相手に対して請求できたはずなのに、と後悔してしまう危険性も否定できません。
そのため、話し合いについては、その場ですぐに承諾はせずに、一度検討するとし、弁護士に1度相談を挟んだほうが安全です。
⑵ 役所に離婚不受理の申し出をする
協議離婚の話し合いをしている間に、相手がしびれを切らして、勝手に離婚届を提出する危険性があります。役所は、離婚届について内容の真偽については確認することがないため、仮に偽造した離婚届でも受理されてしまうこともあります。そして、この偽造された離婚届を撤回するためには、裁判をしなければならず、さらに時間と労力がかかります。
このようなことを避けるために、役所に事前に離婚不受理の申出をしておくことをお勧めします。この申出をしておけば、相手が勝手に離婚届を提出したとしても、役所が離婚届を受理することがなくなります。
⑶ 別居をするかどうかを検討する
同居をしながら、離婚協議の話し合いを進めていくことは互いにストレスを抱えていくことになりますし、顔も合わせたくない場合も十分に考えられます。
そのため、もし離婚の話し合いに時間がかかりそうであれば、別居をすることも検討する必要があります。離婚の前にまず別居をし、生活基盤を整えた上で、腰を据えて離婚の話し合いをすることができます。
また、例えば、夫に比べて収入が少ない妻が、子どもと一緒に別居を開始する際には、今後の生活について不安を覚えることになるかと思いますが、婚姻期間中であれば、収入の少ない妻が夫に対して毎月の生活費(婚姻費用)を請求することが法律上認められています。
そのため、別居をする際には、この婚姻費用の請求も合わせて準備をする必要があります。この婚姻費用については、養育費と同様に、夫婦それぞれの収入や子どもの人数、年齢によって決まってきます。
⑷ 話し合いをしてもうまくいかない場合には、別の方法を考える
離婚の方法で1番多い方法は協議離婚ですが、夫婦で離婚を話し合うこと自体うまくいかない可能性もあります。例えば、もともと夫婦間での力関係があり、相手を前にすると思っていることがうまく言えない方や、言いたいことは言えるけれど、両者ともに感情的になってしまい冷静に話し合うことができないという場合です。
このような場合には、何度話し合ったとしても、協議離婚がうまくいかない可能性があるため、協議離婚は打ち切りにし、離婚をするための別の方法を検討する必要があります。具体的には、次の方法が考えられます。
① 弁護士に依頼をして協議離婚の話し合いをする
弁護士に依頼をすれば、当事者同士が離婚についての話し合いをする必要がなくなるため、スムーズに協議を進めることが可能となります。
また、養育費や財産分与などの法律的な要素についても相談しながら進めることができるので、安心して協議離婚に臨むことができます。
② 離婚調停を申し立てる
当事者間で協議離婚の話し合いがうまくいかない場合には、家庭裁判所に離婚調停の申立をすることが考えられます。
離婚調停を申し立てると、裁判所の職員である裁判官1名と調停委員2名がチームを組んで、夫婦から一方ずつ話しを聞き、離婚に向けての話し合いの仲裁をしてくれます。話しをするのはあくまで夫婦別々ですので、夫婦が1つの部屋で一緒に話しをすることは基本的にはありません。
この調停については、弁護士に依頼をせずに、ご自身で手続きをするという方もおりますが、離婚をする上で法律的な事柄も多く扱うためできれば弁護士と同席の上で調停に臨んだほうが安心して進めることができるかと思います。
③ 離婚訴訟を申し立てる
離婚調停を申し立ててもうまくいかなかった場合には、離婚訴訟を提起するかどうかを検討することとなります。遅くともこの時点においては、弁護士に依頼をすることをお勧めします。
3 弁護士に相談、依頼するメリット
ここまで協議離婚の流れや、協議離婚を進める際の注意点などを説明しました。ここで確認したとおり、離婚をする場合は多くの問題を含んでおり一筋縄で解決できないケースも多くあります。そのような場合には、弁護士に相談、依頼することお勧めします。以下では、弁護士に依頼をするメリットを解説します。

⑴ 適切な選択肢を提示することで、離婚に伴う不安を払拭できる
離婚をすると一言で言っても、慰謝料や財産分与など離婚に関連する問題は多くあり、また、それらを解決する方法も複数存在し、不安を伴うことになるでしょう。
弁護士に依頼をすれば、複数の選択肢の中から、個人の考えと合致したベストの選択肢を一緒に考え、実現することが可能です。
⑵ 相手に対して、弁護士を通じで主張することができる
夫婦間で離婚の話し合いをする場合、両者が感情的になってしまい話しが進まないことも少なくありません。そのような感情的な話し合は、日々精神的に苦痛を伴い、健康を害してしまう危険も考えられます。
弁護士に依頼をすれば、窓口は全て弁護士となりますので、当事者同士で離婚について話し合う必要がなくなります。また、相手と対面ではうまく伝えられなかった考えを、弁護士を通じて効果的に相手に主張することも可能となります。
⑶ 離婚に伴う複雑な問題を有利に進めることができる
上記で説明したとおり、離婚には複数の問題が存在しております。そのような複雑な問題があったとしても、弁護士が事情を踏まえて一つ一つの問題の打開策を考え、交渉を有利に進めることが可能となります。
4 最後に
今回は、協議離婚を進める上でのポイントや注意点について解説しました。
離婚をすることは、結婚以上に、人生において一つの大きな決断となります。
そして、離婚をする場合には、これまでの婚姻期間を精算する意味も含まれておりますので、時間もかかり、感情的にもなってしまいます。そのため、離婚の問題で悩まれている場合には、まず専門家である弁護士に相談だけで話しを聞いてもらうことが大切です。
私は、これまで50件以上の離婚の相談を受け、問題を解決してきました。離婚問題でお悩みの方は、皆様それぞれ事情が異なり、1つとして同じ問題はありません。
私は、特に離婚の問題においては、皆様の個々人の事情に耳を傾け、お気持ちに寄り添いながら、問題に取り組んでいくことを心掛けております。
離婚に関してお困りのことがありましたら、初回の相談料はかかりませんので、いつでもお気軽にご連絡ください。
