「離婚することになったけれど、夫婦でこれまで築きあげた財産を分けたくない…」「離婚後の暮らしのために、財産を多めに取りたい…」と考える方は多くいます。財産分与は、原則的に2分の1ずつ分けなければいけませんが、条件次第では減額できます。
ここでは、財産分与したくない場合の対処法について解説します。この記事を読めば、離婚する際の正しい知識が身に付けられて、落ち着いて財産分与の交渉ができるようになるでしょう。
目次
財産分与したくない場合は減額交渉する

自分の意見が必ず通るわけではありませんが「相手の方が収入が多いし、私は離婚後の生活が少し苦しくて困っているから、2人で築き上げた財産を多めにして欲しい」「相手が離婚したいと言ってきて、それに応じる代わりに財産は全部欲しい」などの交渉をして、相手が合意すれば減額交渉ができます。ここでは、財産分与したくない場合の減額交渉の仕方についてご紹介します。
扶養的財産分与
夫婦が離婚する場合は、それぞれが離婚後に安定した暮らしが送れるように考えなくてはいけません。片方に経済力がなくて、離婚直後は経済的な面で生活に支障が出る場合は、扶養してあげるのが夫婦としての礼儀です。しかし、これは、必ずしもそうしなければならないものであり、夫婦の合意が必要となります。
慰謝料を踏まえて交渉する
財産分与には、離婚による慰謝料としての要素も含まれる場合があります。例えば、離婚原因が相手の不貞行為である場合は、不貞に対する慰謝料請求分を財産分与から差し引くことができます。繰り返される暴力や借金なども慰謝料の対象です。
相手からの離婚に応じる場合に交渉する
離婚は自分が希望するだけではなくて、相手が望む場合もあります。相手が一方的に離婚を申し出てくる場合は、「私は離婚したくないけれど、仕方がないから応じます。その代わりに2人で築いた財産は譲ってください」と交渉することで、財産を受け取ることができます。
財産分与したくない場合に押さえたい基礎知識

財産分与したくない場合は、正しい知識を身に付けて交渉するようにしましょう。
財産分与をしなければいけない理由
財産分与の目的は、結婚生活で夫婦が協力して得た財産を公平に分配することです。これは、財産の清算のため、清算的財産分与と呼ばれています。通常は、この清算的意味合いのものが中心です。
また、離婚後に生活が困難になる側への生活費支援の目的で行われる扶養的財産分与があげられます。また、慰謝料を含めた慰謝料的財産分与や婚姻費用の清算を財産分与で行うケースもあり、目的は多様です。
請求される財産分与の種類
清算的財産分与 | 結婚生活で夫婦が協力して得た財産の清算
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扶養的財産分与 | 離婚後の生活に経済的支障がある場合に、経済的なメドが立つまで支援
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慰謝料的財産分与 | 精神的苦痛に対する慰謝料
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婚姻費用の清算 | 婚姻費用の不払い分
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財産分与の対象・対象外になる財産
財産分与で押さえておきたいことは、どのような財産を分割しなければいけないかということです。ここでは対象の財産と対象外の財産をご紹介します。
共有財産 |
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実質的共有財産 |
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特有財産とは、夫婦それぞれの個別財産とされるものです。独身時代の預貯金・嫁入り道具・結婚後に相続や贈与で得たお金・不動産などが該当します。これらは、財産分与の対象にはなりません。
特有財産 |
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財産分与でトラブルになる財産
トラブルになりやすい財産もあるため、確認しておきましょう。
資産の種類 | 対象になる | 対象にならない |
退職金 |
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借金 |
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別居中の形成資産 |
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特殊な資格 |
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夫婦が経営する会社 |
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基本的な財産分与の割合の考え方
離婚による財産分与の規定については民法768条に「夫婦の協力によって得た財産の額その他一切事情を考慮して」決定するとの規定のみが記載されています。この他には、具体的な算定基準を法的に定めたものはありません。
しかし、清算的財産分与においては、分与の割合は公平であることが必要です。そのため、判例では、分与割合について、財産形成に対する夫・妻それぞれの寄与度によって決まるとの考え方をとっていますが、基本的には、夫婦の分与割合は原則2分の1が適用されます。
財産分与の割合を減らす方法
離婚に至った原因が相手側の不倫やDVである場合、また、専業主婦なのにも関わらず家事をしないなどの場合は、「これまでの婚姻生活で我慢をし続けてきて精神的苦痛を味わってきたから、その分の慰謝料を上乗せしてほしい」と交渉すれば、財産分与減額の対象となります。
財産分与は、お金が絡む問題のため、話し合うと感情的になってしまうことも多いです。そのため、相手に離婚理由があった事実を証明するために証拠を取っておきましょう。事実を証明することができれば、有利な立場で交渉が行えます。
離婚協議書に財産分与を記載する場合の注意点

財産分与に関して取り決めた場合は離婚協議書に取り決め事項を記載します。しかし、取り決め事項を記載する際には注意点があるため注意しましょう。ここでは、離婚協議書に財産分与を記載する場合の注意点について解説します。
離婚協議書には夫婦双方の署名押印をする
口約束だけで済ませた場合、あとになってから、約束が守られていないなどのトラブルの恐れがあります。
この離婚協議書に決められた書式はありません。縦書き・横書きの決まりもなく、用紙のサイズも自由であり、箇条書きでも構いません。後々、トラブルにならないように具体的に内容を書いておきましょう。
離婚協議書には清算条項を入れる
協議離婚に際して結ぶ離婚契約では、財産分与のほか、離婚する条件をすべて定めて、最後に清算条項を確認します。清算条項は、離婚契約書に記載する以外に二人の間に何らの請求権も存在しないことを包括的に確認するものです。清算条項を定めておくと、財産分与に関して取り決めたことを変更できなくなります。
離婚協議書を公正証書にしておく
離婚協議書に記載したからという理由で安心してはいけません。取り決め事項を記載した離婚協議書は私的書類にしか過ぎません。仮に、取り決め事項を破られても、強制執行ができないのです。
そのため、離婚協議書をもとにして新たに公正証書をつくり、法的効力のある書類にしましょう。公正証書は、2人で公証役場に行き、公証人に作成してもらいます。
少しでも不安を感じたら弁護士に相談をしよう
この記事では、財産分与したくない場合の対処法について解説しました。夫婦の財産は半分ずつ分けるのが一般的ですが、相手が合意するのであれば、自由に割合を決めることができます。そのため、扶養や慰謝料などを理由に減額交渉ができるのです。例えば、相手が一方的に離婚したいと切り出してきた場合は、「私は離婚したいとは思わないけれど、その気持ちを受け入れる代わりに2人で築いた財産は欲しい」と財産分与権利の放棄を交渉することもできるのです。
もし、不安を感じた場合は、離婚に強い弁護士に相談をしてみてください。弁護士に相談をすれば、依頼者の代理人として有利な立場で離婚の手続きを進めてくれるため安心できるでしょう。下記の離婚サポートには、離婚問題に強く実績が豊富な弁護士がいます。ぜひ、これから財産分与をしなければいけなくて迷われている方は、サポートセンターを利用してみてください。法律の専門家にフォローしてもらうことで、安心して手続きを進めていくことができるでしょう。