私は、数多くの離婚事件の相談を受けてきましたが、その中でも「性格が合わない」「価値観が合わない」という離婚の理由が数多くありました。ただ、いわゆる「性格の不一致」という事情で離婚をする場合は、不貞や暴力の時とは異なる注意点が存在します。
このページでは、「性格の不一致」という言葉の意味を確認した上で、「性格の不一致」を理由として離婚することがそもそも可能なのか、「性格の不一致」を理由として離婚をする方法などを解説します。
目次
性格の不一致が離婚理由として最も多い

夫婦が離婚する理由は数多くありますが、その中でも断トツで多い離婚理由は「性格の不一致」です。ここではまず「性格の不一致」という言葉の意味を説明します。
性格の不一致とは
夫婦が離婚する理由として最も多い理由は「性格の不一致」です。実際に皆様の周りで離婚をしている方でも「性格の不一致」を理由とている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、「性格の不一致」という言葉は曖昧であり、その上、法的な言葉でもありません。そのため「性格の不一致」という言葉の定義を明確にすることはできません。
「性格の不一致」による離婚を考える上で、大切な視点は、夫婦の生活を続けることが困難なほど相手と性格や価値観が合わず、共に生活することは精神的に苦痛である、ということです。
離婚理由の統計
2018年の司法統計では、離婚調停の申立て総数は、6万5725件でした。その内「性格の不一致」を理由に離婚を申し出てきた夫婦は夫:1万438件、妻:1万8368件です。
参考までに性別にわけた離婚調停の申立の動機に関するランキングを記載します。
男性 | 女性 | 件数(男性) | 件数(女性) | |
1位 | 性格が合わない | 性格が合わない | 10,438 | 18,268 |
2位 | 精神的に虐待する | 生活費を渡さない | 3,370 | 13,725 |
3位 | 異性関係 | 精神的に虐待する | 2,373 | 11,801 |
4位 | 家族親族と折り合いが悪い | 暴力を振るう | 2,294 | 9.745 |
5位 | 性的不調和 | 異性関係 | 2,141 | 7,378 |
6位 | 浪費する | 浪費する | 2.030 | 4,686 |
7位 | 同居に応じない | 家族を捨てて省みない | 1.597 | 3,600 |
8位 | 暴力を振るう | 性的不調和 | 1,502 | 3,293 |
9位 | 家族を捨てて省みない | 家族親族と折り合いが悪い | 887 | 3.171 |
10位 | 生活費を渡さない | 酒を飲み過ぎる | 744 | 2,752 |
この表を見て明らかなように、男女共に「性格の不一致」が断トツで理由の1位として挙がっています毎年この結果に変わりはありません。参考までに以下、2018年の司法統計のURLを記載します。
性格の不一致でも慰謝料請求できるケース
性格の不一致で、修復しがたいほどに夫婦関係が破綻していることもあるでしょう。ケンカをしたときに暴力を振るわれたなどの経験や、夫婦で会話をしていなかったときに、相手が外で浮気をしていた場合など、他の要因と組み合わせることによって、慰謝料が請求できる場合もあります。
他にも、共働き世帯で、相手が自分の欲しい物を自由に買い、家計にお金を入れることをしなかったなども慰謝料の対象になります。
性格の不一致で離婚ができるのか

離婚理由として最も多いのは「性格の不一致」ですが、「性格の不一致」という事情があれば、簡単に離婚ができるわけではありません。ここではどのような場合に「性格の不一致」を理由として離婚ができるのかを説明します。
性格の不一致は法的な離婚事由とはならない
民法では、離婚事由として「不貞」や「暴力」「悪意の遺棄」などが定められていますが、「性格の不一致」は離婚事由として定められていません。そのため、「性格の不一致」を理由として離婚したいと考えた場合、相手が離婚を拒否していた場合には、離婚することができなくなります。
夫婦が合意した場合には離婚ができる
民法で「性格の不一致」が離婚事由として定められていなかったとしても、夫婦が離婚について同意をすれば離婚することは可能です(協議離婚)。
婚姻関係が既に破綻している場合
民法では、上記で説明した以外の離婚事由として「婚姻を継続し難い重大な事由がある」ことと定めています(婚姻関係の破綻)。これは「不貞」や「暴力」の事由と比べて幅のある言葉ですが、例えば、「性格の不一致」を理由に別居をし、別居期間が3~5年経過していたような場合には、婚姻関係が破綻しているとして、離婚事由となります。
そのため「性格の不一致」だけでは、相手が拒否した場合離婚することはできませんが、「性格の不一致」以外の事情(長期間別居している、モラハラがある等)が加われば、婚姻関係が破綻しているとして離婚できる可能性が高くなります。

性格の不一致を理由に離婚する方法

「性格の不一致」を理由として離婚したいと考えた場合、夫婦間の話し合いの他にも様々の方法があります。ここでは、その離婚の方法について説明します。
話し合いによる離婚(協議離婚)
上記でも説明したとおり、両者が合意すれば離婚することは可能です(協議離婚)。
ただ、協議離婚であったとしても、親権や養育費、財産分与など話し会う必要があります。
夫婦同士で話し会うと感情的になってしまいうまく話せないという方は、弁護士に依頼して、弁護士を通じて話し合う方法も効果的です。
調停離婚
当事者間で、離婚の話し合いをする場合、感情的になってしまいうまく協議できないことも珍しくありません。
そのような場合には、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てすることお勧めします。離婚調停は、調停員という公平、中立な立場の方が、夫婦の間に入り、両者から順番に話しを聞いた上で、解決案を一緒に考えてくれる手続きです。
この手続きであれば、夫婦が一緒の部屋に入ることなく、調停員に話しをすることができるので、当事者で話し合うよりは遥かに冷静に話し合うことができます。
離婚訴訟
調停でも話し合いがまとまらなかった場合、離婚の訴訟を家庭裁判所に提起する方法があります。
ただ、この場合は「性格の不一致」だけでは離婚ができないため、上記で記載したとおり「性格の不一致」に加えて、暴力や不貞、長期間別居している事情などが必要となります。
別居をして離婚原因を作る
離婚訴訟を提起したいが、「性格の不一致」以外に離婚の理由が見当たらないという場合には、まず別居をして離婚原因を作り上げる方法があります。
ただ、別居をしたいが、別居をした後の生活費などが不安だ、という方もいるかと思います。そのような場合には、別居をした以降は、夫婦の内、収入の少ない方が収入の多い方に、毎月の生活費(婚姻費用)を請求することができます。
この生活費の計算方法は、夫婦の年収と子どもの人数、年齢によって決まります。参考までに、裁判所が運用している婚姻費用の算定表を下記に記載します。
別居をするタイミングは、子どもの就学状況や生活費など難しい問題でもあるので、迷われている方は、別居のタイミングも含めて弁護士に相談することをお勧めします。
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
性格の不一致を理由とする慰謝料

「性格の不一致」を理由として離婚する場合、相手に慰謝料を請求したいと考える方もおります。ただ、「性格の不一致」を原因とする場合、不貞や暴力に比べて慰謝料が認められる可能性は低いです。ここではその理由などを説明します。
性格の不一致を理由とする慰謝料は認められにくい
慰謝料が発生する場合とは、暴力や不貞のように、相手に対して肉体的、精神的に苦痛を与えたような事情がなければなりません。
確かに「性格の不一致」により精神的に苦痛を被ったということもあるとは思いますが、「性格の不一致」の場合、一方に100%の責任がある場合は珍しく、どちらにもある程度の責任があるという場合が多いです。
そのため「性格の不一致」だけを理由として慰謝料が認められる可能性は低いといえます。
性格の不一致が原因で慰謝料をもらえる場合
性格の不一致を理由とする離婚のケースでも、慰謝料のかわりに解決金という名目で離婚時に一定の金額が支払われるケースも少なくありません。
性格の不一致を理由として慰謝料を支払うと、支払う側は自分の非を認めたことになってしまい納得できません。そのため慰謝料ではなく離婚の「解決金」として支払われるケースが多くあります
この「解決金」の額については、夫婦の収入や資産状況、子どもの人数などにもよりますので、一概に決めることはできません。あくまで夫婦の話し合いで決まるものです。
性格の不一致を理由として離婚する場合の財産分与
「性格の不一致」を理由として離婚する場合であったとしても財産分与を求めることができます。ここでは財産分与の意味や注意点を説明します。
財産分与とは
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に形成した財産を、離婚時に原則として半分に分ける手続きのことをいいます。
原則は夫婦折半
財産分与は、原則として半分に分与することとなります。
預貯金については、夫婦の預貯金を合算しそれを折半します。不動産の場合は、売却して、その売却金額を折半する方法や、一方が不動産を取得する場合、代償金として、不動産を取得する側が、他方に対して、不動産の価値の半額を支払う方法などが考えられます。
夫婦が合意すれば割合を調整できる
財産分与の割合は、夫婦の合意があれば、分与の割合を変更することが可能です。
例えば、「性格の不一致」を理由として慰謝料または解決金を請求したい場合、この財産分与の手続きの中で、その割合を修正して、財産を多くもらうという交渉方法もよくあります。
弁護士に相談、依頼するメリット
ここまで「性格の不一致」を理由として離婚をする場合の方法やその注意点を説明しました。上記で確認したとおり、離婚をする場合は多くの問題を含んでおり一筋縄で解決できなケースも多くあります。そのような場合には、弁護士に相談、依頼することお勧めします。以下では、弁護士に依頼をするメリットを説明します。
適切な選択肢を提示することで、離婚に伴う不安を払拭できる
離婚をすると一言で言っても、慰謝料や財産分与など離婚に関連する問題は多くあり、また、それらを解決する方法も複数存在し、不安を伴うことになるでしょう。
弁護士に依頼をすれば、複数の選択肢の中から、個人の考えと合致したベストの選択肢を一緒に考え、実現することが可能です。
相手に対して、弁護士を通じで主張することができる
夫婦間で離婚の話し合いをする場合、両者が感情的になってしまい話しが進まないことも少なくありません。そのような感情的な話し合は、日々精神的に苦痛を伴い、健康を害してしまう危険も考えられます。
弁護士に依頼をすれば、窓口は全て弁護士となりますので、当事者同士で離婚について話し合う必要がなくなります。また、相手と対面ではうまく伝えられなかった考えを、弁護士を通じて効果的に相手に主張することも可能となります。
離婚に伴う複雑な問題を有利に進めることができる
上記で説明したとおり、離婚には複数の問題が存在しております。そのような複雑な問題があったとしても、弁護士が事情を踏まえて一つ一つの問題の打開策を考え、交渉を有利に進めることが可能となります。
まとめ
今回は、性格の不一致を理由として離婚をする場合の方法や注意点について解説しました。
離婚をすることは、結婚以上に、人生において一つの大きな決断となります。そして、離婚をする場合には、これまでの婚姻期間を精算する意味も含まれておりますので、時間もかかり、感情的にもなってしまいます。
そのため、離婚の問題で悩まれている場合には、まず専門家である弁護士に相談だけで話しを聞いてもらうことが大切です。
私は、これまで50件以上の離婚の相談を受け、問題を解決してきました。離婚問題でお悩みの方は、皆様それぞれ事情が異なり、1つとして同じ問題はありません。
私は、特に離婚の問題においては、皆様の個々人の事情に耳を傾け、お気持ちに寄り添いながら、問題に取り組んでいくことを心掛けております。
離婚をすることに対しては、誰しもが不安を抱きます。その不安を解消するために全力でサポートさせて頂きます。まずは、相談だけでも問題ありません。お困りの方はいつでもご連絡ください。